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 HOME > エッセイ(雑感) >  エッセイ 2006/01/05


■エッセイ(雑感)■

「ソウルで味わった韓流の逞しさ」       弁護士 菅原哲朗


1 DVDを探す。
 2008年中国北京で開催されるオリンピックに向けて、アジアのスポーツ界は大きく飛躍する21世紀初頭の時期に、日本・中国・韓国のスポーツ法学会が足並みを揃え、2005年11月3日韓国ソウル大学において「アジアスポーツ法学会」を創設した。
 アジアスポーツ法国際学術大会の講演に参加された大学教授が「マラソン」という韓国映画のDVDを探したいと言う。韓国の実話を下敷きとしたスポーツを求める身体障害者の物語だ。買物に付き合あって、ソウル明洞の地下街の音楽店に行った。まだ日本で発売されていないので、日本語字幕がなく、ハングル語でも大学の教材に使用するので構わないとの意向だ。
 この音楽店はレコードや音楽CDだけでなく、各種ビデオテープやDVDビデオを店頭に並べている韓国人愛好家の店だ。通訳が店員に確認しつつ、日本メーカーのDVDプレーヤーやパソコンで再生可能か相談していると、どやどやと一見して50代と分かる日本人女性が5名入店してきた。一瞬あたりは韓国語ではなく日本語の洪水となる。これは大丈夫、これは見られない、最新作はないわ、と韓国DVD商品の品定めをする。詳しそうなので、つい我々も「このDVDは鑑賞できますか」と問いかけると、韓国語を見てこれはリージョンコード3だからダメよ、リージョンフリーか日本向けのリージョンコード2を買いなさいとアドバイスを受ける。
 昔の記憶が甦った。パリのルイビトン本店にJTBツアーの買い物バスが到着し、多数の若い日本人女性がカタログを小脇にこのページに載っているバックはどれと、日本語で探していた光景だ。買い物客はすべて日本人で、ここはフランスではない、日本の中の店だという実感だった。もちろん女性陣だけではない、中国大連市のカラオケも中高年の日本人男性集団が、座席に着くと、ここは日本の新宿・池袋のバー・クラブか、という雰囲気にすぐに変わる。
 ここソウルの音楽店も同じだ。日本語が氾濫したとたん国境がなくなり、日本国内の店に変わる。靖国参拝・教科書問題の反日デモは中国でも韓国でもあるが、庶民にとって日本人観光客は、地元にお金を落とすお得様だ。

2 アジアスポーツ法学会の創設
 韓国の新聞では、当初中国から輸入されたキムチに寄生虫の卵が付着していた問題が、逆に韓国産のキムチにも寄生虫の卵があるとの中国側税関の報道で「韓中の貿易摩擦」が大きく取り上げられていた。
 その前までは、渤海論議が盛んだった。韓国では渤海は朝鮮民族の歴史国家だが、中国では東北地区の少数民族が建国した中国の地方政権と主張する。この中国政府の渤海に対する新しい解釈の動きに韓国人は強く反発した。中国側も今の時期に「政治問題化」するのは得策でないとあわてて沈静化に努力した。日本では「脱北者」が話題となるが、中国・朝鮮半島(北朝鮮・韓国)は昔から国境を接しているので、経済活動が活発となればその時代の制約の中で、国の政策とは別に、人々は自由に行き来する。
 島国の日本でも同様で、国家間には大きな「政治問題」があろうとも、異文化に憧れ「韓流」を標榜する日本人女性は逞しい。まさに航空機が発達した現在では、鳥インフルエンザも対岸の火事にならず、海を隔てた日本と朝鮮半島・中国大陸は往来が自由だ。

 東アジアに新しい組織が誕生することは、常に新しい時代を切り開く先魁である。「アジアスポーツ法学会」の創設を契機として日本・韓国・中国など多数の国のスポーツ法学会が国境を越えてアジア地域のスポーツ法共同研究と国際交流を通じて友好と連帯を深めることは、国際スポーツ法を創世する基盤を形作る。それとともに将来の課題であるスポーツに関する国際紛争を解決するスポーツ仲裁(ADR)組織を希求するためにも積極的な試みだ。国際社会のスポーツ文化の発展に法律家として寄与できる基盤を生み出す大きな成果と言えよう。

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